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「明後日、晴れるかな」
私が言うと、ちーちゃんは
「昔みたいにてるてる坊主作りなよ」
と、事もなげに言った。
雨の中のお墓参りは、好きじゃない。
だから、子供の頃の私は、雨が降らないことをと願って、てるてる坊主を作成した。
新聞紙で作った大きなものから、ティッシュで作った小さなものまで、多種多様のてるてる坊主を、家の窓際に吊るし、晴れ乞いをした。
「ちーちゃん、私、もう24になったんだよ?」
てるてる坊主の効果を本気で信じていた子供の頃の私を思い出すと、なんだか気恥ずかしくなって、私は唇を尖らせる。
そして、モヒートを飲み、もう大人ですよ、とアピールして見せた。
「俺がいないところで、金髪時代の俺の写真を見て笑ってた仕返しだよ」
満足そうな顔をして言いながら、ちーちゃんは、新しくモヒートを作り始める。
「ちーちゃん、彼女とか作んないの?」
なんとなく訊いてみると、
「絶対いらない」
と、即答された。
「面倒くさいから?」
「それもある」
「鬱陶しいから?」
「それもある」
「1人が好きだから?」
「それもある」
何を言っても「それもある」と言われそうだ。
「1番の理由は?」
問いかけると、ちーちゃんはライムを潰す手を止めた。
「人を自分のボートに乗せて、無事にこの世を渡りきる自信がないから」
そう、はっきりと言いきって、ちーちゃんは作業を再開する。
「協力して漕ぐってこともできるよ?」
私が言うと、
「仲間割れして後ろからオールで殴られるってことも有り得る」
と、ちーちゃんは返した。
「じゃあ、オールを使わないボートに乗ればいいじゃん」
「どんなボートだよ、それ」
「アヒルボートとか」
一瞬、アヒルボートのペダルをキコキコと漕ぐ、陰鬱な表情の自分を思い浮かべたらしい。
ちーちゃんは、珍しく肩を震わせてクスクス笑いながら「絶対やだよ」と呟いた。
「明唯こそ、俺の心配なんかしてないで、男の1人や2人作りなよ」
「2人作るのはダメでしょ」
「バレたらダメだけど、バレなきゃいいんだよ。
上手いことやりな」
何それ、と思わず吹き出した私に、ちーちゃんは
「1番ダメなのは、余計なことを考えて動かないことだよ」
と、真剣な顔をして言った。
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