8月

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ひとしきり常連客の話を聞き終えると、ちーちゃんは空いたグラスを片手に、カウンターに戻ってきた。 グラスをシンクに置き、 「そういえば、耕作にはここに来るって言ってあるの?」 と、ちーちゃんは私に問いかけた。 「メールは送っといたけど、見たかどうか分かんない」 私が答えると、ちーちゃんは軽く溜息をつく。 「あいつも仕事溜まってるんじゃないの?」 「溜まってるだろうね」 「もし今日、耕作が来たら俺から言うけど、来なかったら明唯が言っといてくれる? 明後日は丸1日仕事できないから、ある程度頑張っとけって」 一瞬、キョトンとした私をちーちゃんは見逃さなかった。 眉尻を少し下げ、唇の片端を、微かに吊り上げる。 わずかにしか顔に表れない、ちーちゃんの苦笑だ。 「やっぱり忘れてた」 確か、去年も同じようなことがあった。下手したら、その前の年もそうだったかもしれない。 「いや、ほんと、毎年申し訳ないとは思うんだけどね」 言い訳を探しながら、私は視線を泳がせる。 「去年も一昨年も言ったけど、スケジュール帳買いなよ。 仕事の締切のことしか覚えられないんだから」 明後日は、盆入りだ。 毎年、この日は、はるちゃんとちーちゃんは店を休みにする。 そして、耕作、私、はるちゃん、ちーちゃんの4人で連れ立って墓参りに行くのが、恒例行事になっている。 スケジュールを管理するのが苦手な私と耕作は、毎年、そのことをすっかり忘れ、はるちゃんやちーちゃんから注意を受ける。 これも恒例になっている。
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