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プロローグ
0-1
高校生アルバイト募集。
レンガに囲まれた暖色系の花々や、白い鳥のオブジェが飾られたケーキ屋の前で足をとめると、扉に貼られた文字につい目がとまり、藤倉昭人は吐息した。
もう探す必要はない。
父の稼ぎが悪いわけではないし、特に欲しいものもないが、大人のイメージとして労働なるものをしてみたかった。
必要なくなったのは、緑に宿る思惟を救えるという特異能力のせいで就職先が決まってしまったからだ。
思惟を統べる連城家当主の孫である、広希の部下。
肩書きはまだ何も聞いていないし、具体的にどういう仕事になるのかもわからない。ただ、
「そこに思惟でもいるか? 昭人くん」
「は?」
いきなり名前を呼ばれた。その若い男の声に聞き覚えはなかったが、思惟、という言葉に驚いて振り向く。
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