26(承前)

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 体長数メートルはある黒い龍があらわれた。おたがいにもつれあうように円を描いて、空中を飛び続けている。その円の中心に黒い雲が出現した。テルがいう。 「孫悟空の筋斗雲(きんとうん)みたいだ」  ジョージが続けた。 「むこうは白だろ。こっちは真っ黒じゃないか」  東園寺彩子は黒雲のうえに腕を組んで胸を張り立ち尽くしていた。兄の死を悼(いた)む黒い進駐軍の軍服姿で、長い黒髪を風になびかせている。  もともとスタイルがいいので、頭身に変わりはないようだ。ただタツオは気づいていた。目には黒いシャドウでおおわれ、唇は黒に近い紫で塗られている。ジョージが天使なら、サイコは死の女神だ。ジャクヤが軽口をたたいた。 「ぼくが稲妻をとったけど、そっちの龍にはなにができるんだ」  サイコが高々と右手をあげた。長い髪を抜いて、龍たちにくわせる。 「あなたたちの力を見せなさい」  3匹の龍がうねるように一度上昇してから、海面にダイブしていく。そのときタツオと龍の目があった。 (あっ! これは……)
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