第3章

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 しかしすずは大喜びで箱のタンバリンのリズムに合わせて踊りだした。 大河はすずに箱を差し出すと、すずは「キャッキャッ」と言いながら箱を叩き、そしてチラッとミナの方を見た。  ミナはすずがご機嫌で遊んでくれているうちに片付けを終えようとテキパキとテーブルを拭いたり皿を片付けたりしていた。ミナはすずの視線に気付くと笑顔で「遊んでもらって良かったわね。でも大きな声を出しちゃ駄目よ」と、言った。  ミナの言葉で安心したようですずは大河の方へ向き直り再び楽しそうに遊んでいた。  大河がここまで子供受けするとは思わなかった。  その様子を見ていた私の両親は「何かあった時は鬼っちに任せられる」と嬉しそうにしていた。  任せていいの? 「締め切りに間に合わない」と大河の歌詞を真似し「ちめちりにあああああ」と適当に歌って踊っている孫を見て本気で言っているとは思えないけど。  そしてある程度は予想していたが、その言葉をついに母が言った。 「将来は鬼っちとの子供も楽しみね」  残念ながら大河は結婚願望は無かった。それに私も大河との未来をまだ想像出来ないでいた。付き合ってまだ1週間しか経っていないから仕方ないかもしれないけど……  でも私は母に対して申し訳ない気持ちだった。  大河とすずの即興ライブは箱を叩き過ぎて穴が開くまで続いた。
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