1670人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
翌朝、シマを起こして、夜が明けていくのを一緒に眺め、
桜を見に行こうとシマを誘う。
桜子の遺骨は桜子の希望で実家に引き取られ、
俺は墓参りをしないよう、桜子に約束させられていたから、
シマと新しい生活を始めるにあたり
自分の決心を報告するのは
桜が咲いたときに昔よく行った場所にしようと決めていた。
本当はシマとのことを桜子に報告するのは
来年になるかと思っていたので、
なんと言おうかとちっとも考えていなかったけど、
急にシマの決心がついたようなので、
ちょうどいいから報告を済ませたい。と思いたったのだ。
桜のトンネルの前でオートバイを止める。
月並みだけど、
桜子に今までありがとう。と別れを告げる事ができた。
桜子、本当に愛してた。
と涙が頬をつたう。
朝の光の中、海岸沿いをオートバイで走る。
後から俺の体にギュッと手を回すシマの体の温かさを感じながら
俺は新しい始まりを感じていた。
「来年も一緒に桜のトンネルを通りたいです。」と言うシマの声が聞こえる。
俺は泣いているのを悟られないように
「おう。」と短く返事をした。
最初のコメントを投稿しよう!