冷徹男の救いの手

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ボランティアでないなら? 戦々恐々と彼の答えを待つ私の喉がゴクリと大きな音を立てた。 「僕のメリットの一つは……」 眼鏡の奥の切れ長の目がストッキングの伝線を指摘した時と同じ表情を浮かべたと思うと、彼の口から衝撃発言が飛び出した。 「ストリップの続きですね」 それを聞いた次の瞬間、私の顔が火を噴いた。 手に何かを持っていたら間違いなくこれまでで一番派手に落っことしていたはずだけど、幸い私は手ぶらだった。 「まあ、それはあなた次第ですが」 酸欠になって口をパクパクさせている私を見て彼は笑うと、また出口に向かって歩き始めた。 「とにかく、あなたに損はないはずですからご心配なく」 からかわれたと悟ったのは、ドアが閉められた後にようやく頭が動き始めてからだった。 同時に、まんまとはぐらかされたことにも。 “メリットの一つ” 彼の言葉の細部を思い返した私は、火照りが鎮まらない顔で冷たい机に突っ伏した。
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