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「本戦、おめでとう」
「・・・ありがとう、愛ちゃん」
「私ね、円なんて敵じゃないってずっと思ってたんだ」
いきなり胸に突き刺さるカミングアウトに、怒りよりも「やっぱりな」という気持ちが先に出た。
思わず苦笑いが浮かぶ。
小鳥遊に退団届を出しに行った時の、愛ちゃんのあの言葉は真実だった。
「すっごい悔しい、なんで円に負けたんだろう」
「う、うん」
バシバシと遠慮なく本心をぶつけてくる愛ちゃんに、顔をひきつらせて黙って頷くことしかできない。
愛ちゃんは言いたいことを全部言いきったのか、くるりと背を向けた。
肩が微かに震えていた。
「今度は、・・・っ負けないよ」
それだけ言うと、勢いよく走り去って行ってしまった。
走り去っていく背中に伸ばした手を力なく下ろした。
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