序章『ディズィ・ノウセル』

2/7
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
(寝るつもりはなかったのにな…) 泥の海に沈んでいくような 感覚に、男は自分が眠り始めて いるのだと悟った。 (くそっ!) 眠らないように注意して いたはずなのに。 なぜ自分は眠ってしまったの だろう? 薄れゆく意識の中で男は、 自身の記憶を探りはじめた。 彼がこの国を訪れた理由は、 とある大富豪が所有する 『女神の涙』 と呼ばれる宝がどんな物なのか、 その確認の為だった。 だが結局それは彼が求める 宝ではなく、意気消沈の男は 相棒と別れ、一人酒場で飲んだ くれたのだった。 (あー…酒か…) 後悔しても時すでに遅し! 男は諦め、襲いくる睡魔に 身を委ねる。 あらがう事はしない。 眠った事への後悔とは裏腹に、 どこか嬉しそうな表情で、 夢の中へとおちてゆく。 (ああ、きっとまたあの夢だ… あいつの夢…) そう確信したのを最後に、 彼の意識は完全に夢の中へと 消えていった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!