27人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
二月。
それは恋をしている者がそわそわと色めき始める季節。
男の子はお目当ての相手からチョコを貰えるかどうか。
女の子は好きな相手がチョコを受け取って貰えるかどうか。
私もその女の子の中の一人。
恋に敏感なお年頃の中学二年生。
中学生一年生の時、同じクラスになった隣の小学校から来たサッカー部の横山君に恋をした。
笑顔が優しくて、気がつくと目で追っていた。
引っ込み思案の私から話し掛けることは無かったが、席が前後になった時から横山君はよく話し掛けてくれた。
二年生でクラスが別れてしまってからは、私は話し掛けることも出来ず、彼から話し掛けられることも中々無くて、ただ一方的に目で追っていることが多くなった。
「ずっと見てるだけで良いの?バレンタインにチョコを渡して告白しちゃえ」
突然の友人の言葉に私は目を見開いた。
「でも振られたら怖いもん……」
私は目を伏せながら呟く。
「じゃあ、誰かに捕られても良いの?」
友人はズバッと私に言葉を投げつける。
「来年だって同じクラスになるかもわからないよ?このまま見てるだけで良いの?」
友人から背中を押されて私は決心を固めた。
やっぱりバレンタインに渡すのは手作りのものが良いよね。
手作りの方がきっと彼に本気さも伝わる。
ケーキを焼こうと思ったけれど、スポンジは上手に膨らますのが難しいらしく、失敗したら嫌だから断念した。
念入りにチョコのお菓子を調べた結果、混ぜて焼くだけのブラウニーに決めた。
「明日、バレンタインだもんね。美貴もそんなお年頃になったのかぁ」
「……」
お母さんにからかわれながらも、一年以上の横山君への気持ちを込めて作った。
味見すると、甘いチョコの味が口の中いっぱいに広がった。
最初のコメントを投稿しよう!