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二月。 それは恋をしている者がそわそわと色めき始める季節。 男の子はお目当ての相手からチョコを貰えるかどうか。 女の子は好きな相手がチョコを受け取って貰えるかどうか。 私もその女の子の中の一人。 恋に敏感なお年頃の中学二年生。 中学生一年生の時、同じクラスになった隣の小学校から来たサッカー部の横山君に恋をした。 笑顔が優しくて、気がつくと目で追っていた。 引っ込み思案の私から話し掛けることは無かったが、席が前後になった時から横山君はよく話し掛けてくれた。 二年生でクラスが別れてしまってからは、私は話し掛けることも出来ず、彼から話し掛けられることも中々無くて、ただ一方的に目で追っていることが多くなった。 「ずっと見てるだけで良いの?バレンタインにチョコを渡して告白しちゃえ」 突然の友人の言葉に私は目を見開いた。 「でも振られたら怖いもん……」 私は目を伏せながら呟く。 「じゃあ、誰かに捕られても良いの?」 友人はズバッと私に言葉を投げつける。 「来年だって同じクラスになるかもわからないよ?このまま見てるだけで良いの?」 友人から背中を押されて私は決心を固めた。 やっぱりバレンタインに渡すのは手作りのものが良いよね。 手作りの方がきっと彼に本気さも伝わる。 ケーキを焼こうと思ったけれど、スポンジは上手に膨らますのが難しいらしく、失敗したら嫌だから断念した。 念入りにチョコのお菓子を調べた結果、混ぜて焼くだけのブラウニーに決めた。 「明日、バレンタインだもんね。美貴もそんなお年頃になったのかぁ」 「……」 お母さんにからかわれながらも、一年以上の横山君への気持ちを込めて作った。 味見すると、甘いチョコの味が口の中いっぱいに広がった。
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