最悪と最愛

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「うん、休みだよ」 「良かった」 ホッと笑う彰兄に、俺は怪訝な顔を向けた。 「実はね、さっきは言わなかったんだけど、僕の手料理を食べた人は、もれなくトイレと仲良くなるんだよ」 「・・・・」 「体が拒絶反応を起こすんだろうね。多分・・・明日の昼頃までは、出られないんじゃないかな」 拒絶反応・・・。はにかむ笑顔が可愛いと思った。喋ってる内容はともかくとして。 「・・・トイレと仲良く?」 「うん。頑張ってね」 何を頑張ればいいのかイマイチよく分からないまま、俺は頷いた。 食べてしまったものは仕方ない。トイレの場所は偶然にもさっき確認したし、迷子になることもないだろう。 俺も男だ。覚悟を決める。若干、彰兄に対するイメージが壊れたような気もするけど、愛ゆえの暴走なのだとしたら、それは全部俺のせいなのだろうから。甘んじて受け止めよう。 少しだけ彰兄の気持ちが怖いような気もするけど、何でも完璧にこなす彰兄の人間臭さが嬉しいのも事実だから。 俺はそっと彰兄の肩にもたれかかった。 「彰兄・・・もうちょっと、待っててね」 俺の気持ちがはっきりするまで。きっと、彰兄のこと好きになるから。 「いつまででも待ってるよ」 優しく穏やかな時間が流れた。時折、暖炉の中で薪が爆ぜる音が響く。静寂に包まれた中、それは突然やってきた。 『ぐるるるる』大きな音が辺りに鳴り響いた。うっと呻く俺を、彰兄が曖昧に笑う。 ああ、くそ。死ぬ程腹が痛え。 腹の中は今、とんでもないことになっている。飲み込んだのは怪獣か?愉しげにタップを踏んで踊ってやがる。 俺は腹を押さえ、前屈みになりながら、トイレへと駆け込んだ。 終
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