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嘘つきな私は小さな雑貨屋を営んでいる。
前の夫と離婚した後に、一人で始めた店だった。
そこには仕入れた雑貨や地元アーティストの作品と一緒に自分の作ったものを並べている。
何を製作しているのかと云えば、昔流行ったフェイクスイーツだ。
フェイクスイーツ、というのは粘土やシリコンなどで作るお菓子に似せた雑貨のことである。バッグチャームにすることもあるし、ネックレスや髪留めに細工することもある。
近年では工場などの大量生産品に市場は淘汰されつつあるけれど、なんとか私の作品はまだ買い手がついている状態で、可愛いもの好きな素人さんの為に教室なども開いてやっていた。
最初は内職として作っていたものが収入源として確立されるまではそりゃあ苦労も多かった。けれど、そんな話を長々としたところで誰も喜ばないだろうから、ざっくりそこは割愛をする。
毎日ぼんやりと店番をして、自分の人生それでいいと納得していたはずだったのに……、
私がアサヤという男に出会ったのは、そんななんの変哲もない日常からだった。
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