ミェンリォ防衛前哨戦

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「・・・結局、阿縷儀殿はレヴィエル達に同行したままか・・・。」 「その分、こちらは余計な事に気を回す必要は無くなりましたが、大丈夫でしょうか?」 「レヴィ、黒猫(カェザル)、そしてレイモンド。この3人でどうにも出来んなら、こちらに残した方が被害が大きかっただろうな。」 少しばかり時は遡り、レイモンド達がイーブジャーラの首都キールに布陣している軍を確認していた頃。 霊峰と湿地帯の境界となっている小高い丘の上。そこにはディザとエヴィルを見つつ、眼下に広がる魔獣の群れを睨むギアとサイスの姿もあった。 戻らぬ阿縷儀の行方、それがレイモンド達と一緒に居ると言うのを知ったのは、レヴィエル達が屍鬼と合流した後、黒猫(カェザル)からギアに念話があっての事だった。 心配しても仕方ない。だが、気にしないのも難しい。迫り来る敵を目前にして余計な事が頭を過ぎるのは、かつての主君に仕えていた頃から無かったこの状況に、ギアは苦笑しつつ、不意に視線を頭上へ向けた。 「・・・来たか・・・。」 呟いたギアの視線の先、何も無い空中に突如現れたのは怪鳥と称される巨大な鳥の魔獣、鱗毛鳥魔種(ラグー・ルー)。 この鱗毛鳥魔種(ラグー・ルー)。単なる巨大な鳥ではない。魔獣にしては非常に珍しい特異能力を持つ鳥である。 その特異な能力とは、と言う、読んで字の如く空間を跳ねるように飛ぶ。飛行距離自体は最長で1キロメートル程だが、連続して跳躍飛行を行う事で超長距離を移動する怪鳥である。 しかも言語理解能力もあり、世界で数匹しか居ないと言われている希少種ではあるが、その個体のどれもが人族の元で確認されている、魔獣にしては非常に温厚で危険性の少ない稀有な魔獣なのだ。 それが突如として目の前に現れたのだが、ギアはそれを迎え入れるように立ち上がり、鱗毛鳥魔種(ラグー・ルー)の背中に視線を向けた。 「やっと着いた・・・。もう大丈夫ですよ。」 ギアの睨むような鋭い視線の先、怪鳥の背中から現れた男の姿。それを視界に捉えた瞬間、ギアは背筋が凍りつき、戦慄する自身の胸の鼓動に打たれ、意識が一瞬遠のく感覚を覚えた。 「・・・まさか・・・。貴様は・・・?!」 「あぁ、そう殺意を剥き出しにされると怪我人に影響が出ます。抑えていただけますか?」 自身の目を疑ったのは言うまでもない。だが、ギアの視界に現れたその男は決してまやかしでは無い。 忘れもしない。最大の驚異となる存在。 「・・・神魔族(ゼレキウス)・・・!!」 怪鳥の背中から真っ先に姿を現したのは、忘却の島に現れ、レイモンドの身に宿ったかつての主君の遺したコアを破壊した存在。 神魔族(ゼレキウス)のゼクスだったのだ。
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