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意識が目覚めた時、瞼を開ける前。
ひんやりとした空気が頬を撫で、寒気が全身を襲う。
ぼんやりとした意識は一瞬ではっきりと、即座に瞼を開けて跳ねるように飛び起きた。
「───あ?」
ここは、何処だ?
やけに薄暗い石造りの部屋、何も置かれていない、非常に寒い部屋。
薄暗いけど、そこが石で作られた場所だと分かる程度に、明るさはある。
周囲を見渡せば、部屋の一角に一つだけ、見上げる場所に小さな穴が開いていて、そこからうっすらと光が差し込んでいる。
「───いや、待て。」
そこで漸く、自分の異常さに気付いた。
───記憶が、全く無い。
自分がどういった人物で、何をしていて、誰と繋がりがあったのか。
何も思い出せない、いや、『知らない』。
こうして思考する事は出来る、しかも、若干声に出している。
さっきから視界に浮かぶ白い息。
端から見たら、「頭おかしいんじゃないの?」なんて後ろ指差される状況だ。
「───レイモンド、マクスウェル。」
そして、思考の末、口から出たのは、私の名前だった。
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