質量保存の法則  プロローグ

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 横路欽二、 51歳、  自分の人生がめちゃくちゃになって 絶望感をいだいたまま数年、 今ここにいる。  小さなマンションの一室でパソコンを見ていた。 数年前、 一流企業の社員だった欽二は 地方の工場に移動させられた。 愛する妻、娘、家もあったが、 単身赴任を余儀なくされた。 すぐに本社へ戻って昇進だろうと思っていたが、 そうはならなかった。 副工場長のポストではあるが実際、 仕事は何もなかった。 事務員の坂上敦子が一人で仕事をこなしていた。 工場長の斉藤正は欽二を歓迎した。  5年過ぎ工場長は本社へ戻った。 「俺は斉藤の後釜だったんだ」 欽二は初めて気が付いた。 休みに家に帰っても妻真澄は機嫌が悪かった。 娘の早苗とも会話がなくなった。
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