質量保存の法則  プロローグ

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 単身赴任が15年くらい続いた頃は 欽二はあまり家に帰らなくなっていた。 当然真澄も他人扱いになった。 娘の早苗は欽二を避けるようになった。 「会社のために尽くしてきた俺は会社に家族を奪われた」  欽二は愛社精神を捨てた。  ある日、 同業者の保健関係の社員が欽二を訪れた。 愛想よく欽二に接し絶対儲かる株があるからと 欽二に勧めた。 「実は前の工場長もやってたんですよ、 工場の仕事は面白くないけどこういう事があるから やっていけるんだって。 最後は大きく儲けて勇退されましたね」  斉藤工場長の名前が出たので欽二の心が動いた。 「斉藤さんの話では会社から前借して儲かった分で返せば いいんだと言ってましたよ」
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