1 彼女の体温

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『船橋―、船橋―』 ドアの前に立っていた僕は一度駅に下りてから、再び電車に乗り込んだ。 その僕の背中を、ぎゅんぎゅんと押してくるやつがいる。 そんなに奥に行きたいなら先行けよ。 僕は身体を細くしてそいつに譲った。 振り向くとそいつは女で、やけに色っぽく前髪をかきあげる。 しかもかなりの美人顔。 それでもそんなじゃきっと男は寄り付かない。 そう悪態をつく僕は二十七歳、まだ童貞。 マイペースで何が悪い。 駅に下りた僕を、くしゃみの三連発が襲った。 そして再度ドア付近を死守。
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