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内裏に響き渡る魔性の声。眷族の鬼神達の哄笑。
―――だめ、だ。
晴明の背中を冷たい汗が伝う。
ろくに修行もしていない自分の力では到底敵うものではない。
焼かれた右腕に激痛が走る。再び閃いた稲光に博雅を抱きしめたまま瞼を瞑った。
どおん!と。物が砕ける音がしたのは遠くで。
顔を上げると目の前には保憲の背中があった。
「ここは退け!奴が狙っているのは時平公の血を引く者だけだ!」
渦巻く黒雲に覆われた空を見上げたまま、保憲が怒鳴る。
「時平公は……私の祖父です」
おずおずと言う博雅に。げ、と保憲が目を剥いた。
「晴明、逃げろ!」
「いやです」
「なにぃ?」
虚を衝かれた保憲が間の抜けた声で振り向いた。
晴明に拒絶されたのが―――初めてだった事に気づいて。
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