そこに愛がなくても

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「来月、香子さんの離婚が成立するからですか?だから皆川さんは」 「彼女があなたに関係のないことを色々と喋ったようで申し訳ありません」 食い下がる私の台詞は遮られた。 “あなたに関係のないこと” 彼は否定しなかった。 そして私を閉め出した。 プライベートに立ち入るな、と。 胸に楔が打ち込まれたように裂けていく。 それきり黙りこんだ私に、やがて彼が静かに口を開いた。 「経験の少なさを大切にして下さい。他の男でわざわざ汚してはいけない人でした」 背中を向けたままの彼の表情は読めない。 噛んで含めるように優しくて、いつもの皆川さんとはどこか違う声だった。 「ここから先の自信は本物の相手にもらって下さい。その時、あなたは僕と最後まで及ばなくて良かったと思うはずです」 「……」 もう何も言えなかった。 心の内の痛みを顔に出さずにいるのが精一杯だった。
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