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金森大輔は100メーター道路をはさんだ名古屋のアップタウン・栄の不動産屋の息子である。おやじさんはなかなかの辣腕で、6本目の自社ビルを建設中だ。大須ではあまり見かけない金ボタンのネイビーブレザーにチノパンは、どちらも海外ブランドである。ふたりは腕組みをして、おたく集団の後方から歌い踊り笑顔を振りまく11人のアイドルを眺めていた。
「うるさいな。だけどアヤカもあんな格好すると女の子なんだな」
センターに立つのは信吾の幼馴染みで、身長が信吾とちょうど同じ177センチある星山綾火だった。超絶的なスタイルをした綾火のファンは男女半々で、アヤリンという声援には女子からの黄色い声も混じっている。実家は大須の街の3割を所有する星郷寺。住職のひとり娘は、信吾と目があうと露骨に嫌な顔をした。信吾はポツリと漏らした。
「おれ、なんかやらしい目であいつのこと見てたかな」
*
ぽんっと肩をたたかれて、信吾は跳びあがりそうになった。振りむくと真っ黒な顔を縁どるように短い金髪をのせた顔がにやにやと見おろしてくる。
「ハバ、お前いきなりあらわれる悪い癖があるな」
金髪の大男がひょいと紙ナプキンに包まれたものを、信吾と大輔にさしだした。
「ほい、お土産」
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