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こくりと息を呑んだ。
すがすがしい風が吹いたよう。
清潔感あふれ、上品、そして、知的な男性だ。
彫りが深い外国人のような顔立ちが、ヨーロッパ紳士を思わせる。
「ほう、なかなかいい」
「結構、様になってんじゃね?」
黒羽さんを悠斗も、藤崎さんを上から下まで満足した眼差しで眺めている。
「文学青年って感じで、かっこいいです!」
「ほんと?じゃあ、詩集とか似合う感じ?」
「はい、似合うと思います!」
私は、目を輝かせて大きくうなずく。
顎に手を当てながら、少しの間考えて、藤崎さんが口を開いた。
「女と猫は追わない時にやって来る」
「……え?」
あれ、なんか聞いたことがある。
大学の課題でやったような ……。
そうだ !
ボードレールの「悪の華」の有名な一節。
『猫と女は、呼ぶと逃げ、呼ばないとすり寄ってくる』という意味だったと思う。
「な、なんでボードレールとか知ってるんですか?」
「意外?」
藤崎さんが、からかうような瞳で私に笑顔を向けた。
はっ!
今、とっても失礼なこと言ってしまったような ……。
返す言葉が見当たらず、思わず口ごもってしまう。
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