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「何日かまえ、このカフェでそのふたりがサトシくんといるのを、みんな見ている。ストーカーは今ごろ警察署で目撃証言をしているの。まだサトシくんのところまでは手が伸びることはないと思う。でも、時間の問題よね」
大輔が小柄なサトシをにらみつけていった。
「おまえ、どうしちゃったんだよ。自分が生まれ育った街に放火するやつなんていないだろ」
届いたアイスコーヒーをガムシロップもいれずにひと息でのみほすと、サトシはしゃがれた声でいう。
「あいつらはプロだ。捕まっても口を割らない。本国には家族がいて、組織のうえになにをされるかわからないからな」
せながじっとサトシを正面から見つめた。
「サトシは放火犯でもないし、地上げ屋でも、ファンドの人間でもない。どうして、こんなことをしたの」
サトシの目が泳いでいた。階段のほうを何度も見ている。信吾は逃げ道を断つようにいう。
「おれたちはただの幼なじみで、おまえが逃げるのをとめることはできない。でもな、サトシ、ここで逃げたら、もう二度と大須には帰ってこられないぞ。おれたちはおまえがしたことは絶対忘れないからな。逃げるか、すべてを話すか、ここで決めろ」
5人全員の視線がサトシに集中した。信吾はなぜかチームにいれてくれと恥ずかし気にいってきた小学校4年生の少年の姿がダブって見えた。サトシはこらえきれなくなって泣き声を漏らした。
「おれは……大須から離れて……生きてけない」
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