小さなあかずきんの生と狼の死

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語り継がれる話は時と共に変わって行く。 それが私に深い意味を与える言葉の綴りであったとしても、ひた隠しにされていたんだ。 少女は町の離れに住む、お婆さんの元へ お使いを頼まれました。 どうやら病で床に臥せってしまったらしく 鞄にぶどう酒といっぱいの食べ物を詰めて、 お婆さんの元へと向かいました。 少女は遠出する際にはいつも真っ赤な頭巾を 被っていて、赤ずきんちゃんと、呼ばれていました。 お婆さんの家へ辿り着くには森を進まなければなりません。 赤ずきんは慣れない道に苦労しつつも 足を止める事無く、お婆さんの喜ぶ顔を思い浮かべながら進み続けました。 すると、赤ずきんの前に一匹の狼が現れました。 「やあ、こんにちは。 こんな森を歩いてどこへ行くんだい?」 「お婆さんが病気でお見舞いに行くんです」 「それは大変だね。 ところで君の鞄から良い匂いがするね。 僕はもう何日も食べていないんだ。 よければ、食べ物を少し分けてはもらえないかな?」 話の通り、狼はやせ細っていました。 ですが鞄に詰めた食べ物を分け与えてしまえばお婆さんに届けられる物はごくわずかになってしまいます。 「ごめんなさい。 お婆さんにあげられる分しか持っていないんです」 「そうなんだ、無理を言ってごめんね。 気を付けて先をお進み」 狼は残念そうにしていましたが、赤ずきんを 笑顔で見送りました。 少し胸がチクリと痛みましたが、そうだ、 いつかあの狼にも食べ物を届けてあげよう。 赤ずきんはそう思いました。
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