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つまり
隼人がインフルエンザから心停止寸前まで急変した最初の原因は
おそらく敦子が注射器を使って汚水か何かを点滴に混ぜたのだろう。
それを見ていた千咲が敦子の真似をし、隼人の点滴に同じことをした
そして更に千咲も…
そして千咲はさっきこう言っていた
隼人が起きなくなったって…
桃子は背筋が冷たくなるのを感じた。
この子たちには悪気はない。
意味もわからずママの真似をしただけだ。
病院にいるとママやパパがやさしくなる、ただそれだけの理由で。
でも
私はこの子が怖い…
普段は無口なのに、こんなことを得意気に話す千咲の姿
重体の子供を前にして不気味に微笑む母親の敦子と、今の千咲の泣き笑う顔が重なって見えた。
この兄妹…、いや、この一家が怖い…
後ずさりしたその時、ドアが開く音がした。
「ちーちゃん!…あれ?桃子…?ごめん、俺、桃子に謝らなくちゃいけない。桃子の言った通りだったよ…敦子さんが…」
「直人、違う…違うの…敦子さんじゃなくて…」
そう言いかけた桃子だったが、直人に合鍵を返し、何も言わずに部屋を出た。
敦子が子供達をそそのかした…?
わからないけれど、もう考えたくない。
もう関わりたくなかった。
「ももこちゃーん!」
初めて千咲が桃子の名前を呼んだ。
「ももこちゃん、またね」
桃子は振り返らずに歩き続けた。
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