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この二通の封書に出会ってから、もう何年が過ぎただろうか。
私は某公立図書館の司書という生業に加え、史跡研究家という ”私人” の肩書きを持っている。
歴史を紐解くとき、その時代々々の文章を扱うのは珍しくはない。
だがこの封書らは、その ”封” を解かれてはいなかった
私が古文書を漁っている際に発見されるまでは。
私が初めて出逢った、私によって初めて陽の目を見る文。
パンドラの箱という言葉がある。
この封書の ”封” を切ってしまった事で、多々の思念が私を包む。
時に想う。
これらは、永遠に発見されず時の記憶に埋没したままであった方が良かったのではないか、と。
それ程に、この封書に込められた ”想い” の深さ、慈しみ、悲観と愛情が、私の史跡家として心を揺さぶるのだ。
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