-序-

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   一つの封書は、男性からのものであった。  封書の署名は、”神山次郎” と記されている。  その宛てた先は、”霧島・A・さくら” とされていた。  綴られた文章を見るまでもなく、女性に宛てたものであるのは明確であった。    もう一つは、その ”霧島・A・さくら” 嬢から、前述の ”神山次郎” 氏へ宛てられたものであった。  端麗でどこか儚げな筆跡。  恐らくミドルネームと思しき ”A” の存在から、私は彼女がハーフ又は日本永住外国人の2世なのではないかと推測している。  彼女を ”霧島嬢” と称したのは、”神山氏” の綴った文面から、その年齢が推し知れたからだ。  恐らく霧島嬢は神山氏よりもずっと年下だったのであろう。  
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