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冷たい駅のホームには、既に乗るべき特急列車が止まっていた。 階段近くの車両に乗り込む。 きっといつもそうなのだろう。 後ろから二番目の窓側の席に腰を下ろす。 シートにもたれた彼女はまた、僕を優しく膝に置いて窓の外へ目をやった。 早く発車するといい。 乗り込んでくる人がいなくなれば通路を歩く人はほとんどいない。 誰にも見つからずに涙を流すこともできるだろう。 動かない窓の外の景色を静かに見ている彼女も、その時を待っているようだった。
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