1章『喫茶 ダイヤル000』

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日々何気なくかけている電話。 大切な人と。毎日会っている人と。 お世話になった人と。しばらく会っていない人と。 気持ちを伝える事が出来ていない人と。 もう…亡くなってしまったあの人と…。 とある街の商店街。 シャッターも少し目立つが人通りは少なくない。 買い物をしている人や帰宅途中の学生の姿が目立つ。 イヤホンで音楽を聴きながら歩いていても、 活気のある声が聞こえてくる。 そんな商店街の隅。 隅ともなると、アーケイドの屋根も無くなり、活気のある中心部とは逆に静けさを感じる場所となる。 見えてくるのは3階建ての古いビル。 1階は喫茶店だ。 「カフェ」という言葉よりも「喫茶店」という言葉がしっくりと来る場所であり、外から見える店内は、白熱灯特有のオレンジっぽい灯りだ。 店の前には小さな立て看板。 『ダイヤル000』 それが、この喫茶店の名前のようだ。 決して流行っていると言える様子ではない喫茶店。 中を覗くと近所のおじさん、おばさんと思われる人が数名いる事が分かる。 カツカツカツ…。ヒールの音が止まる。 音楽を聴きながら歩いていた女性が、 その喫茶店の前で立ち止まった。 スマートフォン片手に歩いている所は、いまどきだ。 スマートフォンの画面と喫茶店、交互に見ている。 イヤホンを外し「ここだ…」そう呟いた。
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