第10話  椿、散花

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そして今回のウリエルとの待ち合わせ場所、椿並木に瞬間移動する。既にその場所でウリエルは待っていた。そっと蓮の花を渡す。蓮の花は、名残惜しそうにサマエルの手の平で震えた。そしてウリエルの手の平に舞う。 「宜しく、頼む」  サマエルは丁寧に深々と頭を下げた。ウリエルは何となく何があったのか察していたが、敢えて何も言わず、 「承知した」  とだけ答え、そして天に向かって舞い上がった。サマエルはそれを見送りつつ、 「志津音、今度こそ健康に元気に転生して、長生きしろよ。そして幸せになれよ」  と呟いた。人間として幸せになるには、もう二度と、自分と出会わない方が良い事は明白だった。  風が優しく、辺りを包み込む。まるでサマエルを慰めるかのように、ハラリ、と彼の肩に白椿が落ちた。彼は優しい目でそれを見つめると、そっと両手でそれを包み込んだ。 「志津音…。愛してる。お前に生きてて欲しかった…」  サマエルは呟くと、手の平の白椿を優しく胸に抱きしめた。オリエンタルブルーの瞳から、涙が零れ墜ちた。  風は椿並木を走り抜け、白椿、深紅の椿、ピンク、斑の、色とりどりの椿の花が、風に舞った。  寺島志津音、享年15歳。儚くも激しく、愛と共に散った。さながらそれは、白椿は深紅に染まり、そして散りゆくように…。  ~完~
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