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 わかるんじゃん?って、占いってもっと不確定な何かだと思うんだけど。  とか思いつつ気力ゲージは赤領域点滅中の上、口からエクトプラズムでも出そうなほど失意の私は、彼女に言われるがままこの辺りで人気だという占い師に連絡を入れていた。  予約は1か月後の平日昼間。それでも運よく取れたほうらしい。  心持ち立ち直り始めてきた占いの当日、駅に隣接した細長い雑居ビルの高層階に降り立つ。 ――『RUNIC DIVINATION』ノックしてください  手書きのメモが張られた重厚なドアを、ためらいがちに2度コツコツする。どうぞ、という声を合図に扉を引くと、案外あっさり開いた。 「どうぞ、こちらのテーブルへ」  間仕切りの向こうから現れた背の高い男性が、部屋の中央にある丸テーブルへと促す。  一礼して椅子に腰かけると、テーブルの上にはたくさんの木片が置かれていた。そのひとつひとつには模様が彫りこまれてる。  あ、これ、模様じゃない。よく見るとルーン文字だ。  中学の頃にハマった漫画や小説の挿絵で何度か目にしたことがある。 「今日はどういったことを見ましょうか」 「はい、あの、男性に関するトラブルが多いので、それを見ていただけますか」  言われるがままに、山積みになった木片の中から計3個を選び出した。  3個目ルーンを見たとき、占い師さんの表情が少し曇る。  ふ、不安になるからやめてほしい。 「……どうやら、あなたの過去にぐさりとささって抜けない剣がありますね。これはすでに『呪い』とすら言える強力な呪縛です」 「ひいいぃやああぁ」 「今よりも若い頃、異性の心を悪戯に傷つけたことはないですか? 例えば、こっぴどくふったというような」 「基本モテないですし、そんなことはな……」  「呪い」という言葉に動転し、ルーン文字の上をただ繰り返し泳がされていた目が、はっとなって止まる。  過去の記憶が、突然、稲妻のように頭の中に落ちてきた。  中学生のとき、人生でたった一度だけふったような感じになってしまった人を思い出す。
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