99人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
いつも打ち合わせに使っているホテルのラウンジで、静かにコーヒーをすすった。待ち合わせ時間にはまだ少し早い。
「大丈夫かなぁ…」
「大丈夫ですよ」
「えっ!?」
バッと顔を上げると、西脇さんが笑っていた。
「に、西脇さんっ! 聞いてたんですか?」
「聞こえたんですよ」
「あ…そうですよね。…すみません」
「いえいえ。北見さんから、仕事は全て森野さんに引き継いだと聞いたので、それでかなぁと思って…」
穏やかな表情のまま向かいの席に座る西脇さんを眺めながら、私はまたぺこりと頭を下げた。
「はい。せんぱ…いえ、あの、北見から独り立ちして、これからは私一人なんですが…今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそ」
西脇さんの笑顔につられるように、私も笑顔になる。
「早速ですが、こちらがデザインになります」
印刷された装丁デザインを渡され、私は丁重にそれを受け取る。そして、「拝見します」と声をかけ、じっくりと確認を始めた。
そのデザインはやはり印象的だった。一見、寂しく重苦しい雰囲気なのに、強さのようなものが伝わってくる。
最初のコメントを投稿しよう!