約束の代わりに

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 いつも打ち合わせに使っているホテルのラウンジで、静かにコーヒーをすすった。待ち合わせ時間にはまだ少し早い。 「大丈夫かなぁ…」 「大丈夫ですよ」 「えっ!?」  バッと顔を上げると、西脇さんが笑っていた。 「に、西脇さんっ! 聞いてたんですか?」 「聞こえたんですよ」 「あ…そうですよね。…すみません」 「いえいえ。北見さんから、仕事は全て森野さんに引き継いだと聞いたので、それでかなぁと思って…」  穏やかな表情のまま向かいの席に座る西脇さんを眺めながら、私はまたぺこりと頭を下げた。 「はい。せんぱ…いえ、あの、北見から独り立ちして、これからは私一人なんですが…今後ともよろしくお願いします」 「こちらこそ」  西脇さんの笑顔につられるように、私も笑顔になる。 「早速ですが、こちらがデザインになります」  印刷された装丁デザインを渡され、私は丁重にそれを受け取る。そして、「拝見します」と声をかけ、じっくりと確認を始めた。  そのデザインはやはり印象的だった。一見、寂しく重苦しい雰囲気なのに、強さのようなものが伝わってくる。
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