うちの父娘

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 母が死んだのは私が生まれて数日後のことだった。健康が自慢の母のまさかの急死。父はその時の記憶がほとんどないという。母の葬儀の時はずっと私を抱いたままロボットみたいに淡々と喪主をしていたらしい。  それからしばらくは母の実家に住んでいた。日中は祖母に見てもらい、父は仕事から帰ったらずっと私につきっきりだったそうだ。夜泣きする私に父はごめんな、ごめんなと言ってあやしていたと祖母から聞いた。なんで謝っていたんだろうと祖母に聞いたら、きっとお母さんがいないからよと泣いた。  物心ついた頃にこの家に帰ってきた。古かった母の実家とは違い、白い壁とどこまでも続く階段が、まるでお城のようだった。あの頃はまだ小さかったから。でも保育園に通う頃はただ寝に帰る家だった。私を保育園へ預け、迎えは祖母が行い、父が帰ってくるまで実家で過ごす。祖父母が協力してくれなかったら、きっと苦しい生活だったんだろう。
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