ようこそ我が家へ!

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庭を眺めながら歩を進め、ようやく辿り着いた住み慣れた我が家。その玄関前。 ざぁっと風が吹き、それにより玄関前すぐそばにある柳の木が緑を揺らす。 この庭にある木は品種は色々あるが、全て柳の木だ。俺の名字と同じ名前の木。というか、俺の名字の由来になったものとも言う。 ヤナギ全般の花言葉は“自由”。 自由に生きられるように、との願いを込めてつけられた名字。 下の名前は拾ったときにはすでに命名されていたが、漢字が違うとのこと。拾ったときに名札が紛れてて、(そう)と書かれていたらしい。 読み仮名は同じ“ソウ”だが、何故命名された漢字を使わず“爽”にしたのかと聞くと「なんか嫌な感じの字だったから」とよく分からない返事をされて、なんじゃそりゃと首を傾げたなぁ。 他の名前にする案もあったらしいよ。海とか空とか。自由を象徴する名字に相応しいでっかいもんを名前にしたいって話してたそうだけど、海も空も広大すぎて逆に寂しいイメージになるから、間をとって爽やかにしようって。 間に爽やかってなんだよ。分からなくもないけどさ。つまりあれでしょ?どちらも青色で爽やかな色ってことでしょ?だから爽って名前になった訳だ。 ちなみに名付け親でもある嵐武様は恥ずかしがって隠していたが、その事実を白狐から暴露された暁には羞恥心のあまり執務室に引きこもった。そのときだけは仕事がすこぶる捗ったと満面の笑顔を見せた白狐は確信犯だと思います。 「ただいまー」 神界に帰って来てからもう何度言ったか分からないただいまを唱え、中に入る。 何ヵ月ぶりかの我が家の匂いに心が安らぐ。 「皆は客間かな?いや、人数多いから大広間にいるかも……よし、せっかくだし着替えていこっと」 人間界では当たり前のように洋服を着ていたが、人生の大半を和服で過ごしていた俺である。やっぱり家では落ち着く格好をしたいよね。 長い廊下を突き進んで自分の部屋にいくと、箪笥の引き出しを全開にしてそこから何着もの服を引っ張り出し頬を赤らめてクンカクンカと匂いを嗅いでいる変態が…… 「何してんの轟木!?」 いや、マジで何してんの??
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