第 3 章  桜堤で   

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向こうは私を憶えてるかしら? そんなこと、ないわね。 忘れてるに決まってる。 満足に話したこともなかったのだから。 あー、こっちを見そう。 でも、まだ私だと気付いてないみたい。 それに、歩いてる道自体が別々だから直近で擦れ違うことはない。 このまま、私は桜並木の遊歩道を。 彼は下の道を。 数メートルの段差だし、向こうがこちらを見上げたりしなければ、多分大丈夫。 万が一、私に気が付いたとして彼はどうするかしら? 黙って、通り過ぎるわよね。 だって、特段の知り合いでもないし……。
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