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記憶
星型の白い花
蕾んで
開いて
咲き誇り
魅せて
膨らんだ果実
まるで初対面の二人が相席したようじゃないかと思った。
君は体も顔もコチラを向いているのに、瞳だけ逸らし心の拒絶を合図した。
聴き慣れた声なのに、知らない人のイントネーションで、別れを語る君。
僕の頭の中は笑顔の君ばかりで、現実の君の言葉は全然聴き取れず
「だから、バイバイ」
しか理解できなかった。
なぜかいつも冷たい君の指先が
雑踏の中でも探せる君の柔らかい声が
いつも淋しがりやな君の背中が
香水をつけない君の薫りが
僕の記憶に刻まれた意味は何だったのか
「僕の何がダメだった?いや、いい、ゴメン」
答えのないクエスチョンでピリオドを打ったのは僕だった。
これ以上、君の震える唇を見たくなかったから。
艶がかり膨らんだ果実
それ以上は弾けてしまうから
二つに割って砕いて
現れた小さな小さな白い実たち
糸を引く悲しみを引き離して
ゆっくりと眠れ
冴えて冷たい都会の空気が澄んで綺麗なわけないのに、鼻腔を通って僕を真っ白にする。
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