チュートリアル

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「おーい、伸(しん)!」 本日最後の授業を終えテキストを鞄にしまい込んでいた塚本伸(つかもとしん)は大きな声でよびかけられて顔を上げた。 長谷部奏人(はせべかなと)が興奮気味な顔で教室に入ってくる。 「よう、奏人(かなと)。どうした?」 伸はいつも通りの落ち着いた態度で返す。 「これ、知ってるか?」 奏人が差し出したスマホにはデザインされたロゴで【インテリジェンス オブ ガバナー】の文字が。 『統治者の知性…直訳するとそういうことかな?』 伸は奏人からスマホを取り上げ画面に表示されたサイトの内容を読む。 「なにこれ?…新番組…視聴者参加型クイズ番組…」 「そうそう!今度4月からの新番組でさ!これ、おもしろそうなんだよ!一緒にやろうぜ!…恵実(えみ)ちゃんも誘って」 妙にテンションの高い奏人。そうだ、奏人はクイズ番組が大好きなのだ。わざわざ録画し貯めて見る程に。 何かというと奏人は伸を誘う。高校1年の頃に同じクラスになったことがきっかけだ。 その夏の【高〇生クイズ】は奏人が申し込み、有無を言わせずに参加させられた。3人組のもう一人は伸と学年1,2位を争う生田恵実花(いくたえみか)。伸の幼馴染でもある。 地方大会の東京都ベスト8まで残ったのだが、準々決勝の勝負所で奏人が痛恨のお手付き。 奏人はしばらく猛烈に後悔していたが、奏人程に思い入れていなかった伸や恵実は残り8チームに残れただけでも満足だった。楽しかったし。 ちなみに今年の【高〇生クイズ】は地方大会2日前に奏人が自転車に乗っていて車に接触され転倒。全身打撲と右脚骨折のために参加を見送った。奏人はベッドの上で猛烈に悔しがった。 およそ半年前のことだ。
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