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感触がちゃんとある。 千鶴の手は少し冷たいけれど、俺にちゃんと触れている。それを感じる事が出来る。 あの頃は痛みも気持ちよさも曖昧で、真幸の喧嘩の仲裁に入って巻き込まれて殴られるなんて事がよくあった。 けれど俺はその痛みをあまり感じていなかった。 真幸はよく「いてぇ、いてぇ」と文句を言っていたけれど、俺は腫れた自分の顔を見ても何とも思わなかった。 自分に執着がなかったんだ。 「千鶴が出ていってから、まともに生活出来なくてさ。お前と一緒にいた時間なんてたかが知れてるのに自分でもびっくりした」 あの頃よりは随分まともな人間になってはいたけれど、ここまで俺を乱した奴は千鶴が始めてだ。 真幸がまた施設に戻ってきた時も、爺さんが死んだ時もそれなりに心は動かされたけど、こんなに不安定にはならなかった。
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