2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「僕、星野翔太。犬さんは?」 「わて? わては王子の友人、ナンア三世や」 「外国の人?」 「あの赤い星からきたんやで」  翔太は犬が指す方角を見ました。真っ暗な空に、一際輝く赤い星。 「ベテルギウス?」 「おう、にいちゃん、よう知っとんね。そうや、わては宇宙から来たんやで」  なんと、宇宙から来た宇宙犬だったのです。  翔太はクラクラしてきました。  ふらついている翔太を見て、毛むくじゃらの犬は、 「腹減ったんか?」 と言いました。  そういえば、お昼から何も食べていません。 「わても腹減ったわ」  二人のお腹がぎゅうんと鳴りました。  翔太が心細そうに、 「僕、お金、持ってない……」  言ったその時、二人のところにふわりといい匂いが漂ってきました。 「……ええ匂いがする」 と、鼻をクンクンさせるのを見て、翔太も真似しました。  確かにいい匂いです。  翔太は胸いっぱい吸い込みました。 「パンだ。焼きたてのパンの匂い!」 「ショータ、パンもらってきいや」  翔太にはパン屋でパンをもらうなんてこと、できません。 「ええっ?! ……やだよ……」  そこで翔太は犬の名前を言おうとしたのですが、はてさて。  名前が思い出せません。  ベテルギウスから来たことは覚えているのに。  翔太は空を見上げました。  空には星が輝いています。  翔太はそっかと頷き、言いました。 「ホッシーが行ってきて」  犬は目をしばしばさせながら翔太を見つめました。 「……ホッシーって誰や」  犬の言い方に、翔太はちょっとどぎまぎしました。  怒ってるのかな。  翔太はもじもじしながら言いました。 「……だって犬さんの名前、覚えにくいから」  するとどうでしょう。  犬はしばらくホッシーホッシーとつぶやいていましたが、そのうち、 「まあ、ホッシーでええわ。なあ、はよパン。わてはもうここで死んでしまうわ」  そう言うと、パン屋の前に座り込んでしまいました。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!