第十話 未来へ

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あれから失業保険が切れた私は、アルバイトを始めた。 雑貨店の、スタッフとして。 今まで引きこもっていたので、急に正社員として働く勇気がなかった私は、とりあえずフリーターから始めることにした。 時間が、解決してくれるよ。 いつかの、比呂の言葉だった。 そう、時間が解決してくれる。 そう思って、頑張らないと。 当分の間、恋愛なんてご褒美は私には落ちて来ないと思うので、アルバイトに励もうと思う私であった。 そう考えながら、レジ業務に励んでいると。 店内にある、売り物の人形がこちらを見ている気がした。 ーーー可愛い。 昔、美咲ちゃんは色白で可愛いお人形さんみたいねーと言われたことを思い出す。 あれがおそらく、人生で最大のお世辞であり、褒め言葉であった。 だが、大人になって、臨機応変に振る舞えない言動が、まるで人形みたいだなと自虐するようになった。 ーーーでも。 そんな人形でも、やるときゃやるの精神で、頑張らないと。 いつか絶対、正社員に戻ってみせる。 そんな私の夢は、今日も小さな雑貨店で燻り続け、叶うタイミングを待っている。
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