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あなたも知ってるこの呪文。
「チ・ヨ・コ・レ・エ・ト!」
ポンポンポン、となるべく大幅で歩を進める。そしてかけ声と共に6歩進み、そこで前を歩く彼に声を掛ける。
「えへへ~、大分追いついてきたぞ~!」
「なかなかやるな。だがまだまだだぜ!」
確かにその通り、彼と私の距離はまだ10歩分程ある。
「あんた、男だからずるいんだもん。歩幅でかくて。全然追いつけない。歩幅は身長引く1mだっけ? 10cmは多いじゃん」
10cmも違えば大変な差である。それが6歩などと言ったら、60cmにもなる。私の1歩分以上、つまり7歩進まれているのと同じなのだ。これはずるいだろう。
「たった今、有り得ない程の大股で歩いておいてよく言うよ」
10歩向こうの彼は呆れ顔である。
「うるさい! 次のじゃんけん! いくぞ~」
「よ~し、じゃん、けん」
「「ぽん!」」
彼は隣りに住む一つ上の男の子。記憶のはじめの頃から一緒にいるし、しょっちゅうお互いの家にお邪魔してるし、親だって本人だって、もう兄妹みたいなもんねと笑っている。
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