完全犯罪!

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捜査本部に呼ばれた名探偵の丹。本来であれば部外者には見せられない筈の捜査情報、それを纏めたファイルを念入りに読んでいる。 「なるほど…これは厄介な完全犯罪ですね。シンプル故に、難解。いや、よく出来ている。双子である事を巧みに利用した、他では真似できない、この二人だからこそ可能にした完全犯罪ですね」 丹が読み上げた捜査報告書。そこに書かれていたのが完全犯罪の全貌である。 被害者の名前は鈴木 太郎。 妻は早くに亡くし、二人の息子と同居していたが、親子喧嘩が絶えず五年前から別居。 二人の息子は兄の一郎と弟の二郎。双子で同い年。 犯行現場は被害者の自宅の玄関を上がってすぐの廊下。犯人の用意した紐によって絞殺。 近くのコンビニにある防犯カメラに、犯人と思われる男の顔が鮮明に映し出されていた。それが息子の顔である。直ちに逮捕、起訴に踏み切ろうとしたがここで問題が。 防犯カメラに映った息子の顔…これは果たして兄か弟、どちらの顔なのかという問題が勃発。 取り調べによると兄は弟が犯人だと、弟は逆に兄が犯人だと供述。 どちらかが嘘をついているのは明白。しかし、二人のどちらが犯人かを特定できない限り、逮捕には踏み切れないのだ。 双子である事を利用して、兄弟のどちらかが親を殺害。その犯行を兄弟のどちらが行ったのかさえ分からなくしてしまえば、犯人の特定ができずに不起訴となる。遺産目当ての計画的犯罪だ。 一卵性双生児が故にDNAは一緒。犯行現場に残されていた犯人のDNAは二人のものであったが、勿論それだけでは犯人がどちらか判別はできない。 判別できないから逮捕はされない。どちらかが犯人であると分かっているのに…目の前に犯人がいながら逮捕出来ないのだ。なんとも、もどかしい話である。 犯人が分かっていても逮捕が出来ない完全犯罪。丹の言う通り、シンプル故に難解な事件であった。
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