桜舞恋歌

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桜舞恋歌

春 満開の桜が舞う吉野山。 そこで出合った二人は 共に哀しみを背負った者 同士だった。 桜舞う季節 必ず 貴女を 迎えに参ります。  男は“鬼”として生まれてくるのだという。  女は生きながらにして“鬼”に成るのだという。 「いやあぁぁ! この子を、この子をどこかへ! このような忌まわしい子など、妾の産んだ子ではない!」  それが、生まれたばかりの彼に投げつけられた、初めての言葉だった。 「いかに美しかろうとも、笑わぬ泣かぬ姫では面白くも可笑しくも無い。白拍子の方が、まだ可愛げがあろうと言うものじゃ」  それが彼女に向けられた、世の評判の全てだった。
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