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「……どうした?」
まるで子供に尋ねるかのように優しい声が八戸からこぼれる。
ここに木場や久野が居れば腹を抱えて笑うであろう優しい声だ。
「あ、あそこ!」
顔を向けずにある一定を指し示す相澤の指を辿っていくと、廊下の端にキラリと光る何かを見つけた。
相澤の頭を優しく撫で落ち着かせながら、そのキラリと光る箇所へゆっくり歩いていく。
そこにあったものは――――――――
「…………おい。大丈夫だ。良く見てみろ」
八戸に促され恐る恐る顔を上げると、そこにあったのはぬいぐるみであった。
「ぬ、ぬいぐるみ?なんで?だって目が光ったし……」
「んー、この目玉のせいじゃね?なんがビー球みたいなのがはめ込んであるし」
「…………」
八戸の言う通りぬいぐるみの目玉は硬い素材で出来ており、何処からかの光を反射して光ったように見えただけだったようだ。
という事はたかがぬいぐるみに驚いていた訳で、それに気づいた相澤を羞恥が襲う。
「べ、別に俺分かってたし!」
ゆっくりと八戸から距離を取ると、20m先に見える職員室へ一目散へ駆けて行った。
どうやらここまでくればあとは怖くないらしい。
「クックックッ……可愛いなぁ」
そんな後姿を眺めながら、八戸が幸せそうに呟いたのだった。
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