前編 -1‐

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「電気、点けなかったの?」 「一瞬だけ、点けました。そしたら、眠っている姿が目に入ったので……」 消しました……、と消え入るような声で答えた。 「前は、電気点いてたのに入ってきたよね?」と尋ねると、「また、倒れていらっしゃるかと思い……」と、これまた消え入る声で囁かれた。 「……、」 それはつまり。 望都が思い描いた予想では全くなかった。 自分に会いたくて、抱かれたくてやってきた、と思っていた自分にがっかりする。 「では、あたしはこれで……」 「えっ?」 立ち上がろうとした梶矢に思わず声が漏れた。 行っちゃうの? と言いそうになった。 言いそうになった時には、その手首を掴んでいた。 そんな望都に、梶矢が肩を揺らした。 捕まえてしまえば、力では敵わない。 「えっ、ちょっと待っ……」 「その気がないんなら、寝ている男に近づいちゃダメだよ」 梶矢を引っ張り、ソファーの上に閉じ込めた。
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