初恋の味は

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初恋の味は

 高校生活が始まって2週間ほどが経った。  学校生活はまだまだなれないところがあるけれど、登下校の風景はさすがにもう馴染んでいる。  自宅の最寄り駅で電車を降り、歩くこと数分。閑静な住宅街はちょっとした迷路みたいになっているけど、15年も住んでいれば迷うこともない。いつも通りの夕暮れに染まる家々の中で、ふと前方に一人、私とは違う制服を着た男子が目に入った。  その後ろ姿に、自然と胸が高鳴る。  後ろ姿だから顔は見えないし、遠いから髪型だって判然としない。  けれど、分かってしまう。  ぼんやり歩いていると歩く速度が遅くなるところ。  時々空を見上げて立ち止まる癖。  怪我をして以来、下がってしまった右肩。  制服は中学の黒の学生服から常盤高の薄茶のブレザーに変っているけれど。その姿を見間違えるはずがない。  中学時代、気が付けばずっと目で追っていた後ろ姿。前を歩いているのは、間違いなく藤村君だ。  この道を歩いていくと、もうしばらくしたところで藤村君とは別の方向へ曲ることになる。ちょっと早足で歩けば、今のペースの藤村君に追いつくのは簡単だ。  でも、追いついてどうする?      
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