初恋の味は

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 話すことなんて、何も思い浮かばない。中学時代ずっと一緒のクラスだったのにろくに話もできなかったのだから、今日いきなり話すことがあるはずもない。  それじゃあこのままゆっくり歩いて、藤村君が行くのを後ろから見てる?  藤村君が振り返って気付いてくれたらって、そういうことに期待する?  卒業式以来全然会わなくて。  もう一ヶ月以上も会っていなくて。  それでも結局、毎日のように藤村君のことを思い出していた。  やっぱり好きなんだって、会えなくても気持ちは変わらないって思い知った。  そんな人を、ただ後ろから見ているだけで本当にいいの? 「藤村君?」  後ろから名前を呼ばれて振り向くと、そこには中学の時の同級生が立っていた。 「あ、島崎? 久しぶりだね」  卒業式の日以来だから、1ヶ月以上は会っていなかった。それまでは毎日同じクラスで顔を合わせていたのだから、すごく久しぶりな気がする。 「藤村君って常盤高だったんだ」 「そうだよ。  島崎は緑南? 清華くらい行けそうだったから、ちょっと驚きだな」  小学校は違うけれど、中学校では三年間同じクラス。席も時々隣になったりしたことがある。     
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