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――最悪だ。
何で、こんなに事になったんだ。
古びた石段を駆け上がりながら、清里にいなは後ろをチラリと振り返った。
黒いモヤが蛇の様にうねりながら追いかけてくる。
その大きさは昔、映画で見た巨大蛇と同じくらいだ。
何でこんなのに追いかけられなければならないんだ。
にいなは己の運の無さを嘆いた。
昔からそうだ。
他の人には見えない変なモノが見えた。
見えるだけならまだしも、それはたまに身体に纏わり付いてきて動きを鈍らせたり、体調を悪くしたりする。
誰にも見えないから、理解してもらえない。相談なんかしたら最後、中二病を拗らせてると笑われる。
だから見えないフリをした。すると何故か纏わり付いてきた奴等は自分をスルーする様になった。
見るから興味を持たれるのだと理解してからは、極力そういうモノを無視する様にした。
それ以来、何とか平穏な日々を送れるようになった。
たまに強烈な奴に出食わすと、無視していても影響を受けたりしたけれど、それでも弱気でいると余計悪くなると思い、つとめて強気な態度でいるようにした。
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