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さっきまでは理性など、どこかに飛ばし切って獣のようだった男は、既に冷静さを取り戻している。自由は葉山の極端なギャップに若干慄いていた。
「──誠一郎、もっといい加減になりなね」
何のことか分からず、葉山は目を瞬く。
「誠一郎はこれからも仕事柄、他人に気を遣って生きていくでしょ? だから、他人じゃない俺には気を遣わなくて良い。家族なんだから、ね?」
「──かぞ、く……」
「そ! 俺たちは家族なんでーす! 身内なんです! 遠慮しなーい! はい、誠一郎! 抱っこして!」
「早速かっ」
「はーやーく!」
両腕を広げて「早く早く」と自由は小さい子供のように身体を揺する。
ハーッと葉山は大きな溜め息をつくと、我儘な伴侶をいきなり肩に担いだ。
「ワアッ!! ちょっと! ナニコレ! 色気ないんですけど!」
「お前にそんなモノ必要でしたかねー」
「なぁにをー! こんなピチピチ男子を捕まえといて失礼なーっ!!」
肩の上で自由は両足をバタつかせ、葉山の背中を拳でパカパカと殴る。
「暴れんなっ、落としても知らないぞ、ピチピチ男子!」
それこそ色気も何もない。ギャーギャー喚く自由は荷物の如く葉山に運搬され、ふたりのベッドに半ば投げるように降ろされた。
「ちょっと、アンタ! 愛、愛が足りないんじゃないの! もう少し優しっ……」
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