イノセントダーティー

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イノセントダーティー

 彼女の全てがほしい。もっと深く理解したい。いつまでもそばにいたい。そんな風に強く心を奪われるのは初めてだった。  大学生になったばかり。春の夜。  あの時アオイさんと出会わなければ、きっとこんな感情を知ることはなかったと思う。  それまでも何度か女の子と付き合ったことはあるし、彼女達のことをそれなりに好きだから付き合ったはずなんだけど、アオイさんに出会った後ではそれらがちゃんとした恋愛だったのか分からなくなった。  そういう意味で言うと、アオイさんに出会ってから俺はまともに人を好きになるという経験を実感できたんだと思う。  一途な想いで成り立つ恋。人より遅い初恋。  アオイさんはとても優しく聡明な女性だった。彼女も俺のことを友達レベルくらいには好きになってくれていたはず。  でも、好きになってはダメな相手だった。アオイさんには旦那さんがいたからーー。
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