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「……ん?」
音の出所は、おそらく外。どうやら玄関の方から聞こえてきたようだ。
来客かと思い窓を全開にして覗いてみたが、すぐに違うとわかった。
郵便配達らしき自転車が走り去っていくのが見えたから。
…ということは、何か郵便物が届いたのか。
あ、そうと納得して勉強に戻ろうとしたものの、すぐにペンが止まってしまう。
…なんだろう、この感じ。
いつもなら郵便なんて全く気にしないし、わざわざ取りに行くこともない。
普段は夕方になれば母親が帰ってきて回収する。万が一私宛のものがあっても知らせて渡してくれるだろうし。
それなのに、妙に落ち着かない。
まるで何かにせっつかれているかのように胸がざわめく。
『あいつ』のことを思い出していたからだろうか。
「………」
結局私は勉強を中断し、郵便を確認しにいくことにした。
まあ、どうせ集中出来ていなかったし、これも息抜きになるかもしれないし…。
そんな言い訳めいたことを思いながら。
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